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孟母断機の教え

 投稿者:はすぴー  投稿日:2007年 7月12日(木)09時11分8秒
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   「孟母三遷」という言葉は、よく知られている。
 中国の有名な儒学者であった孟子(もうし)の母親の、
 教育に対する姿勢を表わした言葉である。

 孟子が少年だった頃、一家は墓地の近くに住んでいたが、
 孟子が葬式ごっこばかりするので、孟子の母は家を引っ越した。
 そして市場の近くに引っ越したのだが、
 今度は孟子が商売ごっこばかりするので、また母は引っ越した。
 今度は学校の近くに家を引っ越すと、
 ようやく孟子は勉強をするようになった。
 というのが「孟母三遷」の故事である。

 この「孟母三遷」というのは別に、
 「子供に勉強させたかったら学校の近くに引越しなさい」
 「葬儀屋や商店の近くに住んではいけません」
 「子供と住むなら、東京大学や代ゼミの近くの家にしなさい」
 という意味ではない。
 「子供の成長には、環境が大切である」という意味である。

 さてさて、そんな孟子も立派に成長し、
 孔子(こうし)の孫にあたる子思という人物の門下に入り、
 その学問所で儒学を学ぶことになった。
 しばらくして、ある程度の学問を習得した孟子は、
 お土産を持って実家に帰ってきた。
 ちょうど母親はその時、機を織っていた。
 久しぶりに帰ってきた息子の孟子に、母は言った。
 「おや、どうして帰ってきたんだい」
 「母上への親孝行かと思い、帰ってまいりました」
 「学問所での学問は、どの程度まで学べたのかい」
 「ある程度までです。まあいいところまで学んだので、
  一旦帰省させてもらうために、学問所にはお休みを頂きました」
 孟子の答えを聞いた母親は顔色を変えて、機を織る手を止めた。
 そして、引き出しの中から小さな刀を取り出すと、
 間もなく完成しようとする織りかけの織物を、
 刀で真ん中からビリビリと切り裂いてしまった。
 「ああっ、なぜ完成間近の大切な布を破るのです!?」
 慌てて孟子は言った。
 二つに断ち切られた織物を手にしたまま、母は答えた。
 「おまえは、学問を完全に習得しようとこの家を発ち、
  学問所に入ったのではないのか。
  学ぶことを中断するということは、
  私がこうやって、編みかけの織物を
  途中で切ってしまうのと同じようなことなんだよ」

 母の眼は怒りにも似た光を放っていた。
 孟子がお土産として持って帰った高価な茶葉の瓶を、
 今にも裏の川にチャッポーと投げ捨てんばかりだった。
 孟子は母の言いたいことの全てを理解して、
 泣きながらまた学問所に戻っていった。

 そして孟子は、子思先生の下で毎日学問に明け暮れ、
 やがて国内にその名を轟かせる名儒学者になった。
 その孟子の教えが記された書物「孟子」は、
 四書五経のひとつにも数えられる名著となる。

 後に誰もが、
 「孟子の母こそ、人間の母親のあるべき姿を知る人間である」
 と評価し、その教えを「孟母断機の教え」と呼んだ。
 
 
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